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競争が激化するマッチングアプリ市場で頭角を表す「タップル」のCMOから学ぶ、思考方法と行動指針

by 髙橋 正俊 氏 | 12月 6, 2021

髙橋氏のキャリアとバックグランドについて

髙橋 正俊 氏は株式会社タップルのCMOとして、恋活マッチングアプリタップルのマーケティング全般を統括しています。 2005年に株式会社サイバーエージェントに入社後、広告代理店事業に13年間携わり、ダイレクトレスポンス型の広告だけでなく、デジタルでのブランディング広告にも従事しました。その後、2019年にサイバーエージェントグループ内の株式会社タップルに異動し、ダイレクト広告を担当。 2020年3月から同社のマーケティング責任者を務めています。

髙橋氏のインタビュー記事については、こちらをご覧ください。

タップルについて

タップルは毎月1万人以上のカップルが誕生しているマッチングアプリです。マッチングアプリ利用満足度では、No.1を獲得(*)。コアユーザーは20代で、婚活目的というよりも、カジュアルな恋愛を楽しむ層がメインのターゲットです。 *ゼネラルリサーチにて、マッチングアプリ10社を対象にしたサイト比較イメージをインターネット調査、調査期間:2021年3月23日〜25日、調査対象:全国20代〜30代の男女1008名

1. 競合優位性を構築するために必要な2つの考え方

「表層思考」と「深層思考」の2つの考え方を大事にしています。
「表層思考」とは、一般常識やセオリー通りの考え方のことです。 他者からも賛同されやすく、考えるためのカロリーもあまり必要ありません。「深層思考」とは前提を疑った、非常識な思考を指します。 思考カロリーが多く、リスクも高く、他者からは受け入れられにくい側面があります。

一般論は必要ですが、他社と同じことを考えていても競合より優位に立つことはできないので、「表層思考」と「深層思考」の両方の思考で考えた上で、成果が出る方を選択するようにしています。仕事以外の生活の中でも、一度他の人と違うことを考える癖をつけています。

マッチングアプリ業界は徐々にレッドオーシャン化してきており、他社と同じことをやっていても競合より優位に立つことができません。 競合優位を築くためにも、常識にとらわれないユニークな発想を大事にしています。私はとりわけマーケティングに特化したキャリアを歩んできたわけではありません。
だからこそ「マーケはこうあるべき」という固定観念がありません。経験が浅いのを活かして、0ベースで考えているので、いい意味で特殊と言われることがよくあります。

2. Web広告代理店のキャリアから得た行動指針とは

広告代理店のキャリアが長く、ずっとWeb広告に従事していたことから、PDCAサイクルの「Do(実行する)」部分の重みを最上位で捉えています。Web広告は出さないとユーザーの反応がわかりません。反応してすぐに内容を変えることもできます。 そういった領域での経験が長いので、時間をかけて準備した1つの施策を進めるのではなく、いくつかの施策を次々に試していき、うまくいったものを進めていくという考え方を大事にしています。

マーケティングファネルの捉え方やKPIの考え方は、Webに携わってきた経験が長かったせいか少し特殊な部分があるかもしれません。
よく妄想するのですが、もしテレビとインターネットが同時にこの世の中に生まれていたら、各マーケティングファネルへの予算アロケーションバランスはどうなっていたのだろうか?境界線が曖昧なブランドとダイレクトのKPIは分けたのだろうか? クリエイティブの考え方も分けたのだろうか?などゼロベースで一度自分の頭で表層思考と深層思考の両面で考え、正しいと思う方を実行しています。

その上で、売上への貢献も自分が正しいと思うやり方で定量化して、PDCAを回しています。
もちろん代理店の方々との協業の仕方についても、代理店時代の経験は活きています。 代理店は広告費をできるだけ多くしてサービスを抑えたい、広告主は広告費をできるだけ少なくして、多くのサービスを得たいという、逆相関関係があると考えています。
このギャップを埋めるのは広告主の一つの仕事だと思います。 広告主としての理想を自己開示しインプットすることで、広告主と代理店で考え方を100%シンクロさせることを目指します。

そうすることで、代理店の方々もチームの一員として自走してくださるようになり、結果、広告主のマーケティング活動のパフォーマンスが最大化されるようになります。
新世紀エヴァンゲリオンでいうところのパイロットが広告主で、代理店が機体のエヴァンゲリオンに当てはまると言えます(笑)。 エヴァンゲリオンとパイロットのシンクロ率が高まることでパフォーマンスは大きく向上します。

3. 人格を重要視する組織づくり

組織づくりにおいては「人格」「マインド」「スキル」を重視していますが、一番に「人格」を重要視しています。
「もう一度一緒に仕事したい」「相手の気持ちや状況がわかり気遣いができる」「〇〇の頼みならやってやるか」と思われるような、人格の高さが重要です。 人格が高い社員が集まり、心理的安全性を高めればよいアイデアがどんどん出てきます。

様々な施策の実行も人格の密度が高まるとすごいスピードで進みます。
そして、「マインド」は責任者と同じ目線であるかがポイントです。 人任せではなく自ら責任者として成果を出そうと「自走」している、外部環境のせいにするのではなく「自責」がある、物事を「深層」まで考えて妥協しない選択肢を選んでいるかどうかが大切です。
チームメンバーには思考カロリーを大きく消費する覚悟はあるかという点も求めています。

最後に「スキル」は正直そこまで求めてはいないのですが、以下のような能力があると良いと思っています。

  • 構造把握力:物事の構造を把握でき、成果の変数が大きい部分を自分で見定められる
  • 巻き込み力:成果を出す為に巻き込むべき人を巻き込める
  • 推進力:成果が出るまでプロジェクトを推進し続けられる

なお、推進力については、「人格」「マインド」の高さと相関性があると考えています。
また、こういった方針を、誰が聞いてもわかるような言葉に置き換えて説明させることも徹底しています。 見栄を張り業界用語を多用すると、相手が理解できず、そこで思考が止まってしまうということはよくあります。 見栄を張らずに、誰が聞いても理解できる言葉を使うようにしています。

まとめ

私は、基本的には自分で納得していることだけを実行しており、そうではないことは納得するまで答えを探すようにしています。
常識や一般論、他社で行われている施策や有名なマーケターの方の提言などもそのまま受け入れるのではなく、すべて一度自分の頭で考え、成果を最優先で考え、取り入れるべきものは取り入れ、疑うべきものは疑い、自分が納得する形に変換して実行するようにしています。

その結果、差別化につながるユニークな打ち手を生み出すことができていると思います。 社内のメンバーにもこう言った考え方を持つことが大事だと伝えており、そのカルチャーが徐々に浸透してきていると思います。