iOS14.5におけるアプリマーケティングの変化

By Henry Wang | April 5, 2021

まず基本を確認しておきましょう。

iOS 14.5 のアップデートにより、アプリマーケティングに大きな変化していくことが予測されています。

まず、1つめは、 Apple のApp Tracking Transparency (ATT) ポリシーで、ユーザーにIDFA追跡許可を求めることがアプリに義務付けられる点です。 ユーザーの大半がオプトアウトし、ビッドリクエストにはIDFAが含まれないことが予測されます。

2つめは、iOS 14.5で主流となるアトリビューションフレームワーク、 AppleのSKAdNetwork (SKAN) です。SKAdNetworkでは、 ポストバック にユーザーレベルの情報(IDFAを含む)が含まれず、遅延が発生します。つまり、トラッキングおよび最適化対象のデータが少なくなる可能性があります。

いずれも、ユーザープライバシーへの配慮という観点では素晴らしいアップデートですが、アプリマーケティングにとって、全体的に細かい粒度のデータは取得できなくなることが予測されます。これまで利用できていたユーザーレベルのデータ、そしてリアルタイムのポストバックが利用できなくなるiOS 14.5のリリース後は、アプリマーケティングに大きな変化をもたらすでしょう。

iOSにおけるマーケティングの変化

行動ターゲティングからコンテキストターゲティングにシフト
IDFAが利用できない場合、広告主は時間帯、端末モデル、パブリッシャーアプリ、そして一般的な場所などのコンテキストシグナルに頼らざるをえなくなります。Liftoff では、すでにコンテキストシグナルを使用し、追跡型広告制限(IDFAなしのiOSトラフィック)で Playrix や Yubo などのお客様が高いパフォーマンスを維持しています。

幅広いオーディエンスへの訴求ができるクリエティブの必要性 
IDFAを利用しなければ、パーソナライズ化された真の広告は不可能になります。そのため、広告主はより広範なオーディエンスに訴え、インストール数の増加に結び付けられるクリエイティブを作成する必要があります。また商品フィード広告には、ユーザーの過去の行動履歴に基づく関連商品ではなく、最も人気の商品を表示することが必要になります。

IDFA のないリエンゲージメントは不可能に
ほとんどのビッドリクエストにはIDFAは含まれません。SKANのポストバックにはIDFAがなくなると、IDFAにすべてを依存するリエンゲージメントにとっては二重の痛手です。iOS 14.5のリリース後は、リエンゲージメントキャンペーンを縮小し、インベントリのSKANへの移行に合わせて予算をiOSユーザー獲得(UA)キャンペーンへ移行すると良いでしょう。Androidでは、引き続きリエンゲージメントキャンペーンを実行できます。

インクリメンタリティの測定への変化
インクリメンタリティ測定は、コンバージョンとリフト(増分効果)の測定にIDFAが不可欠であるため、IDFAが利用できなければ実施が難しくなります。

ROAS 最適化への変化
SKANでは、ポストバックには疎なデータしか含まれないうえ、遅延が発生します。さらに、SKANでは、インストールおよび最終的なコンバージョン値を含む、1つのアプリ・1ユーザー当たりのポストバックのみが送信されます(ユーザーのプライバシー保護のため、SKANではこれも常に送信されるわけではありません)。このため、広告主はポストバックの遅延と不足データに備えてROAS目標を調整する必要があります。また、下層ファネルのイベントと相関する初期イベントを発見し、ROASを推定することが必要になります。

レポートへの変化
iOS 14.5がリリースされると、ATT実装前(計測ツールでのアトリビューション)とATT実装後(SKANでのアトリビューション)、そして測定不可のトラフィックが混在するようになります。MMPレポートは現状どおり継続されますが、SKANレポートは(SKANのポストバック制限により)地理情報とトップソースアプリに制限されてしまいます。問題なのはパフォーマンスではなく、測定方法であり、これがSKANであることを理解する必要があります。